愛媛県が「あきたこまち」を全廃へ!高温耐性品種「にじのきらめき」に完全転換する理由と今後の展望

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「愛媛県産のあきたこまちが、もう食べられなくなる…?」──そんな衝撃的なニュースが飛び込んできました。2026年3月6日、伊予市のウェルピア伊予で開催された「えひめ米 品質向上推進大会」にて、JA全農えひめが歴史的な方針転換を正式に発表しました。温暖化による品質低下が深刻な「あきたこまち」の作付を段階的に縮小し、2030年には作付面積を0ha(ゼロヘクタール)にするという計画案です。

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代わりに愛媛の主力品種として台頭するのが、農研機構が開発した高温耐性品種「にじのきらめき」


1. えひめ米品質向上推進大会で何が発表されたのか?

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2026年3月6日に伊予市で開かれた「えひめ米品質向上推進大会」(主催:県米麦振興協会、JA愛媛米麦生産者組織協議会など)には、県内のコメ農家や行政関係者らおよそ100人が出席しました。大会では2025年産米の実績報告と、2026年産以降の作付計画という2つの柱を中心に議論が交わされました。

県米麦振興協会の武田孝二会長は冒頭挨拶で、次のように述べています。

「市場価格が大きく変動する中、生産者経営の安定や関係機関との連携が、これまで以上に重要となってくる」

── 県米麦振興協会 武田孝二会長

この言葉の背景には、2024年夏に始まった「令和のコメ騒動」と呼ばれる全国的な米価高騰、そして依然として続くコメの価格変動リスクがあります。愛媛新聞の報道(参考①)によると、大会では2025年産の主食用米の作付面積は前年並みの約1万2,700ha、10aあたり収穫量は前年を21kg上回る512kgと豊作であったことが報告されました。

2. 2026年産のコメ作付目標──前年比680ha増の1万3,380ha

大会で特に注目を集めたのが、2026年産の作付計画です。JA全農えひめ米穀課の野本克央課長は、今年の作付目標を前年より680ha増となる1万3,380haと設定したことを明らかにしました。

「こちらを基本に需要に応じた食用米、水田活用米穀、裏作品目と作付して水田基盤を維持していきたい」

── JA全農えひめ米穀課 野本克央課長



この増産方針の背景には、2024年から続くコメの需給逼迫があります。愛媛県農業再生協議会が2025年12月に発表した方針では、2026年産主食用米の生産目安(生産数量)を6万6,633トンと設定し、作付面積は前年比5.4%増となっています(参考②)。全国的にも安定供給に向けた増産ムードが広がる中、愛媛県もその流れに沿った形です。

3. 歴史的方針転換──「あきたこまち」作付0haへの道筋

そして、この大会で最大の注目を集めたのが、愛媛県産「あきたこまち」の段階的廃止という歴史的な方針転換の発表です。

「『あきたこまち』については、令和7(2025)年産から令和8(2026)年産で大きく面積が減少しています。それに置き換わるのが『にじのきらめき』と」

── JA全農えひめ米穀課 野本克央課長

「あきたこまち」は秋田県が生まれ故郷のブランド品種であり、全国的にも広く栽培されてきました。しかし近年、温暖化の進行に伴い、愛媛県のような西日本地域では登熟期(稲穂が実る期間)の高温が著しくなり、白未熟粒と呼ばれる品質劣化が深刻化しています。白未熟粒とは、コメのデンプン蓄積が高温で阻害されて玄米が白く濁ってしまう現象で、等級の低下=農家の収入減に直結します。

農研機構のプレスリリース(参考③)によると、「コシヒカリ」の場合、出穂後20日間の日平均気温が27°C以上になると白未熟粒の発生が増加し、整粒歩合が顕著に低下するとされています。「あきたこまち」もコシヒカリ系統の品種であるため同様の弱点を持ち、四国の夏の猛暑にはもはや耐えきれない状況にあるのです。

JA全農えひめの計画案では、この品質低下が著しい「あきたこまち」の作付面積を段階的に縮小し、2030年の作付計画案では県内産の「あきたこまち」を0ha(完全廃止)とする見通しです。代わりに主力となるのは、「コシヒカリ」「にじのきらめき」、そして愛媛県独自のブランド米「ひめの凜」など、高温耐性と食味の両方を備えた品種群です。

4. 「にじのきらめき」とは?──高温に強い次世代のエース品種

「あきたこまち」に代わって愛媛の主力品種に浮上するのが、「にじのきらめき」です。2026年産では作付面積が前年の約3倍の2,000haに拡大する見通しとなっています。

「にじのきらめき」は、農研機構(国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構)中日本農業研究センターが2018年に育成した中生(なかて)品種です。農林水産省の技術紹介ページ(参考④)によると、その特徴は以下の通りです。

特徴項目 にじのきらめき コシヒカリ(比較)
収量性 標肥で15%多収、多肥で30%多収 基準
高温耐性 28°Cでも整粒歩合70%維持 27°C以上で品質顕著に低下
食味 コシヒカリと同等の極良食味 極良食味(基準)
粒の大きさ やや大粒 標準
耐倒伏性 短稈で倒伏に強い やや弱い
耐病性 イネ縞葉枯病に抵抗性あり 抵抗性なし

さらに、農研機構の2022年の研究(参考③)では、「にじのきらめき」が高温下で穂の温度を低く保つ「高温回避性」という独自のメカニズムを備えていることが世界で初めて明らかにされました。登熟期においても穂が葉の中に隠れた状態を維持するため、直射日射量が少なくなり、さらに周囲の葉の蒸散による冷却効果を受けやすくなるのです。この「自然のエアコン」とも言えるメカニズムが、猛暑下でも美しい玄米品質を守る秘密です。

愛媛県では2023年からJA松山市が試験栽培を開始し(参考⑤)、2025年秋には松前町で本格的な収穫も行われています。毎日新聞の報道によると、JA松山市では「あきたこまち」からの完全切り替えを見据え、段階的に「にじのきらめき」の栽培面積を拡大してきました。さらに、JA周桑では「にじのきらめき」を使った再生二期作の実証試験で10aあたり約870kgという驚異的な収量も記録されており、多収品種としてのポテンシャルも実証されています。

5. なぜ品種転換が必要なのか?──温暖化がコメに与える深刻な影響

品種転換の根本的な原因は、言うまでもなく地球温暖化です。環境省の報告(2026年2月公表)によると、温暖化による白未熟粒率は21世紀中頃には約20%に達し、影響は北日本にまで広がると予測されています。21世紀末には白未熟粒率が約40%にまで上昇するという衝撃的なシナリオも示されています。

農林水産省の資料では、高温耐性品種を導入することで全国平均の白未熟粒率を8〜13ポイント低下させることが可能とされています。つまり、品種転換は単なる「品揃えの変更」ではなく、日本の食料安全保障に関わる構造的な対応策なのです。

愛媛県は四国に位置し、夏の気温は全国的にも高い水準にあります。登熟期にあたる7月下旬〜8月中旬の気温が年々上昇する中で、高温に弱い「あきたこまち」の一等米比率は低下の一途をたどってきました。もはや生産者の栽培努力だけでは限界があり、品種そのものを「暑さに強い」ものに変えていくことが不可欠となっているのです。

6. 愛媛のコメの未来を担う品種ラインナップ

2030年の作付計画案において、愛媛県の主力品種は以下のような布陣に変わる見通しです。

品種名 位置づけ 特徴
コシヒカリ 引き続き主力品種 極良食味の定番品種。栽培管理の工夫で品質維持を図る
にじのきらめき 新たな主力品種 高温耐性・多収・コシヒカリ並の食味。あきたこまちの後継
ひめの凜 愛媛県オリジナルブランド米 大粒・華やかな香り・上品な甘み。16年かけて開発された県独自品種
にこまる 高品質安定品種 食味ランキングで高評価。西日本向けの高温耐性品種
あきたこまち 2030年に0ha(廃止) 高温に弱く、品質低下が著しいため段階的に縮小

愛媛県が16年の歳月をかけて開発した「ひめの凜」も忘れてはなりません。愛媛県庁公式サイトによると、大粒で透き通るような美しさ、華やかな香りと上品な甘みが特徴で、冷めても美味しいため弁当にも最適です。認定栽培者にのみ生産が許可されている品質管理の厳しいブランド米であり、愛媛の米のプレミアム路線を担っています。

7. 現場の声──コメ農家が直面する厳しい現実

品種転換という大きな構造改革の陰で、コメ農家たちは厳しい現実と向き合っています。大会に出席した今治市のコメ農家からは、切実な声が聞かれました。

「今もうコストの方が高いから利益が出んのよね。せめて再生産価格、次が作れるような米価設定をしてほしいわね」

── コメ農家(今治市)

「わしらは年とったから辞めたい。やけん(作付を)減さざるをえん。とりあえず僕らが元気でやれる間はやれるかも分からんけど」

── コメ農家(今治市)

これらの声は、愛媛に限った話ではありません。農林水産省の調査によると、基幹的農業従事者は2000年の240万人から2024年には約111万人と半分以下にまで減少しています。愛媛県でも高齢化と後継者不足は深刻で、愛媛県が公表する「えひめ農林水産業振興プラン2021」では、少子高齢化の進行に伴う担い手不足と農地管理の困難化が最重要課題として位置づけられています。

さらに、2024年夏の「令和のコメ騒動」以降、コメの小売価格は歴史的な高値圏にあります。一見すると農家にとって追い風に思えますが、実態は肥料・燃料・農薬・農業機械のコスト上昇がそれ以上に進行しており、収入は増えても利益が出ないというジレンマに陥っています。「再生産価格」──つまり、翌年もコメを作り続けるために最低限必要な収入すら確保できないという声は、全国の米産地で共通の叫びです。

8. JA全農えひめの今後の取り組みと展望

こうした厳しい環境の中、JA全農えひめは以下のような取り組みを進める方針を示しています。

まず第一に、行政と連携した栽培管理指導の強化です。品種が変われば栽培方法も変わります。「にじのきらめき」は短稈で倒伏に強いという利点がありますが、白葉枯病にはやや弱いという弱点も指摘されています。農研機構の研究データに基づいた適切な栽培マニュアルの普及と、現場できめ細かい技術指導を行うことで、品種転換をスムーズに進めていく計画です。

第二に、需要に応じた作付体系の構築です。食用米だけでなく、水田活用米穀(飼料用米・米粉用米など)や裏作品目(麦・大豆など)を組み合わせた水田のフル活用を目指しています。野本課長の発言にもあったように、「水田基盤を維持していく」ことが愛媛の農業の持続可能性に直結するからです。

第三に、ブランド力の強化と販路拡大です。愛媛県オリジナルの「ひめの凜」をプレミアムブランドとして全国に発信しつつ、「にじのきらめき」や「にこまる」などの安定品種で量的な供給力を確保する──この二層構造が、愛媛米の競争力を高めるカギとなります。

9. 消費者が知っておくべきこと──「にじのきらめき」はおいしいの?

消費者として最も気になるのは、「にじのきらめき」は本当においしいのか?という点ではないでしょうか。結論から言えば、農研機構の食味評価において「にじのきらめき」はコシヒカリと同等の「極良食味」と評価されています。

具体的には、コシヒカリに近い甘みを持ちつつ、粒はコシヒカリより一回り大きめで、すっきりとした味わいが特徴です。炊き上がりの白さとツヤが美しく、ほどよい粘りがあり、雑味のないクリアな味わいで毎日食べても飽きにくいバランスの良さが魅力とされています。「にじのきらめき」という名前の由来も、その美しい炊き上がりと多彩な魅力にちなんだものです。

「あきたこまち」が好きだった方も、「にじのきらめき」に切り替わることで食味面での大きな違和感は少ないと考えられます。むしろ、高温障害を受けた品質の低い「あきたこまち」よりも、適正環境で栽培された「にじのきらめき」のほうが、実際の食卓での満足度は高まる可能性があると言えるでしょう。

10. まとめ──愛媛のコメは「適応」の時代へ

愛媛県の米づくりは今、大きな転換点を迎えています。温暖化という避けられない環境変化に対し、「あきたこまち」を完全に手放すという決断は、農家にとっても消費者にとっても大きなインパクトがあります。しかし、これは後ろ向きの撤退ではなく、未来を見据えた前向きな「適応戦略」です。

高温耐性品種「にじのきらめき」への転換、愛媛オリジナルブランド米「ひめの凜」の育成強化、そして行政・JAが一体となった栽培管理指導の充実──これらの取り組みが実を結べば、愛媛は「温暖化に適応した先進的な米産地」として全国のモデルケースとなる可能性を秘めています。

一方で、生産者の高齢化や後継者不足、そしてコスト上昇による経営圧迫という構造的な問題は依然として残っています。品種転換だけで全てが解決するわけではなく、適正な米価の形成、新規就農者の支援、スマート農業の導入など、多面的な政策対応が求められます。

2030年、愛媛の田んぼから「あきたこまち」の姿が消える日──それは同時に、新しい愛媛のコメの物語が本格的に始まる日でもあります。消費者の私たちも、「にじのきらめき」や「ひめの凜」といった新しいお米を積極的に手に取り、その味わいと背景にあるストーリーを知ることで、日本の米づくりの未来を応援していきたいものです。


引用元・参考資料

【参考①】 愛媛新聞ONLINE「26年産米作付け計画の方針など確認 えひめ品質向上推進大会」(2026年3月7日)
https://www.ehime-np.co.jp/article/news202603060276

【参考②】 日本農業新聞「26年産 主食米目安6万6633トン 作付面積5.4%増 愛媛県再生協」(2025年12月12日)
https://www.agrinews.co.jp/news/index/350796

【参考③】 農研機構 プレスリリース「水稲品種『にじのきらめき』の暑さ対策──高温条件下でも外観品質低下が少ないメカニズム」(2022年6月2日)
https://www.naro.go.jp/publicity_report/press/laboratory/carc/153330.html

【参考④】 農林水産省「高温耐性に優れた多収の極良食味イネ品種『にじのきらめき』」
https://www.maff.go.jp/j/kanbo/kihyo03/gityo/new_tech_cultivar/2019/2019seika-03.html

【参考⑤】 毎日新聞「猛暑に負けられない コメ新品種『にじのきらめき』を試験栽培 愛媛」(2025年7月2日)
https://mainichi.jp/articles/20250701/k00/00m/040/127000c


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