高市首相「憲法改正の発議を1年以内に」自民党大会で表明──参院”46議席不足”の壁と国民民主の動向

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2026年4月12日、東京都内で開かれた自民党の第93回党大会において、高市早苗首相(自民党総裁)は憲法改正について「立党から70年、時は来た」と力強く宣言し、「発議にめどが立ったと言える状態で来年の党大会を迎えたい」と明言しました。これは事実上、2027年春までの約1年以内に憲法改正の国会発議に道筋をつけるという意思表示です。

衆議院では2026年2月の総選挙で自民党が戦後最多の316議席を獲得し、単独で3分の2を超える圧倒的な基盤を持っています。しかし参議院では、自民・維新の与党会派を合わせても120議席にとどまり、発議に必要な3分の2ライン(166議席)には46議席届かないのが現実です。この「参院の壁」をどう乗り越えるかが、改憲発議の最大の焦点となっています。

「時は来た」──党大会演説の全体像

高市首相は党大会の演説で、憲法改正を「今後30年の国の安全保障を考える上でも、これまでになく死活的に求められている」と位置づけました。自民党の結党70年という節目を強調し、党是としての改憲に取り組む姿勢を鮮明にした形です。

「発議にめどが立ったと言える状態で来年の党大会を迎えたい」──高市早苗首相(2026年4月12日・自民党大会演説)

ただし、首相は演説の中で具体的な発議スケジュールや、自民党が2018年にまとめた改憲4項目(自衛隊の明記・緊急事態条項・合区解消・教育の充実)のうちどの項目を優先するかについては言及しませんでした。翌13日の政府・与党連絡会議や自民役員会においても、改憲に関する具体的な発言はなかったと報じられています。

党大会ではあわせて今年の運動方針が採択され、今国会中に憲法改正の議論を加速させる方針が盛り込まれました。結党70年に合わせた新たなビジョンも発表され、改憲を政権の中核的アジェンダに据える意図が鮮明になっています。

「めど」の中身とは?萩生田幹事長代行の解説

高市首相の発言を受けて、自民党の萩生田光一幹事長代行は13日の記者会見で具体的な補足説明を行いました。萩生田氏は「次の党大会ということだから、およそ1年以内に発議ができる環境を整えるということを明示した」と述べ、首相の発言が事実上の期限設定であることを認めました。

記者から「めど」が指す具体的な状況について問われると、萩生田氏は二つの要素を挙げました。第一に「条文の整理」、すなわち改正条文案の確定作業であり、第二に「各党の合意」、つまり衆参両院で3分の2を確保するための与野党間の合意形成です。

改憲4項目の「一括」にはこだわらない柔軟姿勢

さらに注目すべきは、萩生田氏が自民党の改憲4項目を一括で発議することにこだわらず、一部を先行して発議する可能性について「あり得る」と述べた点です。これは、全4項目で合意を得るのが困難な場合に、比較的コンセンサスが得やすいテーマから段階的に進めるという現実的なアプローチを示唆しています。緊急事態条項など、与野党を超えて議論が進んでいる項目が先行候補になるとの見方が出ています。

衆院と参院の議席状況を数字で比較

憲法改正の国会発議には、衆参各院の「総議員の3分の2以上」の賛成が必要です(日本国憲法第96条)。2026年4月現在の両院の状況を数字で確認すると、衆院と参院の間に極めて大きなギャップがあることがわかります。

316
衆院・自民党議席
(定数465/3分の2=310)
101
参院・自民党会派議席
(定数248/3分の2=166)
120
参院・自民+維新
(与党会派合計)
46
参院で3分の2に
不足する議席数
総定数 3分の2ライン 自民党議席 与党会派合計 過不足
衆議院 465 310 316 352(自民+維新) +42
参議院 248 166 101 120(自民+維新) −46

衆議院では自民党だけで3分の2超を確保しており、連立パートナーの日本維新の会(36議席)と合わせると352議席に達します。発議に対するハードルは事実上クリアされている状況です。

問題は参議院です。2025年7月の参院選で自民党は議席を大幅に減らし、与党は参院でも過半数を割る「少数与党」状態に陥りました。改憲発議に必要な166議席に対し、自民と維新の与党会派合計は120議席で、46議席が不足しています。この差を埋めるためには、国民民主党(25議席)、公明党(21議席)、参政党(15議席)など複数の会派からの賛同が不可欠です。

参院”3分の2″の壁──46議席をどう埋めるか

参院の改憲に関わる主要会派の議席数(2026年4月13日現在)

会派名 議席数 改憲スタンス
自由民主党・無所属の会 101 推進(改憲4項目を主導)
日本維新の会 19 推進(与党として協力)
国民民主党・新緑風会 25 前向き(項目により協力余地)
公明党 21 条件付き(加憲の立場)
参政党 15 前向き
立憲民主・無所属 40 慎重〜反対
日本共産党 7 反対
れいわ新選組 5 反対
その他・無所属 14 個別判断

仮に自民(101)+維新(19)+国民民主(25)+参政(15)がすべて賛成に回れば160議席となりますが、それでも166議席にはあと6議席足りません。公明党(21議席)の協力、あるいは無所属議員の取り込みが不可欠であり、事実上「改憲に前向きな全勢力の結集」が求められる厳しい算術になっています。

公明党は連立を離脱し2025年に立憲民主党と合流して「中道改革連合」を結成しましたが、2026年衆院選で惨敗し再び分離。参院では独立会派を維持しており、改憲に対しては従来の「加憲」(現行憲法に条項を加える)の立場を保っています。項目次第では協力の余地がありますが、自民党との距離感は従前より広がっている状況です。

自民党内の改憲派重鎮議員からは「勇ましい発言だが1年では時間が足りない」との指摘も出ており、別の中堅議員は「保守派をつなぎ留めるための強気の発言にすぎない」と冷めた見方を示しています。理想と現実のギャップをいかに埋めるかが、今後の焦点です。

各党の反応──賛否割れる野党の思惑

国民民主党:「肯定的に受け止めている」

国民民主党の川合孝典参院幹事長は13日の記者会見で、高市首相の発言を「肯定的に受け止めている」と評価しました。国民民主党はかねて緊急事態条項の整備など部分的な改憲に前向きな姿勢を示しており、項目が絞られれば協力する可能性が指摘されています。

ただし、高市政権と国民民主の関係は2026年度予算審議をめぐる対応をきっかけにこじれた経緯があります。自民党の鈴木俊一幹事長は国民民主を念頭に連立枠組みの拡大に改めて意欲を示しており、改憲論議をきっかけに関係を修復し、将来的な連立参加まで視野に入れる狙いもありそうです。

立憲民主党:「改憲ありきに危機感」

参院野党第一党の立憲民主党は対照的な反応を見せました。水岡俊一参院代表は13日の会見で「憲法改正ありきで議論が進むことに危機感を持っている」と述べ、改憲を前提とした議論の進め方を強くけん制しています。立憲は参院に40議席を持つ最大野党会派であり、その動向は発議の行方を大きく左右します。

その他の政党

参政党(15議席)は改憲に前向きな姿勢を維持しています。一方、日本共産党やれいわ新選組は一貫して改憲に反対の立場をとっており、こうした護憲勢力が一定の議席を確保していることが、3分の2の壁をさらに高くしている構造的要因です。

改憲発議の3つのシナリオ

シナリオ①:項目絞り込みで1年以内に発議(楽観シナリオ)

緊急事態条項など比較的合意が得やすいテーマに絞り、国民民主・公明・参政の各党から個別に賛同を取り付けるルートです。萩生田氏の「一部先行発議もあり得る」発言は、まさにこのシナリオを想定したものとみられます。2027年春に発議が実現すれば、同年秋には国民投票が行われる日程感になります。

シナリオ②:条文整理にとどまり発議は先送り(現実シナリオ)

参院での合意形成が難航し、条文案の整理や憲法審査会での議論は進むものの、3分の2の確保には至らないケースです。高市首相は「めどをつける」と表現しており、発議そのものではなく「発議に向けた環境整備」が完了した段階で目標達成と位置づける余地を残しています。2028年の参院選後に再挑戦という流れになる可能性があります。

シナリオ③:改憲論議が政局化して頓挫(悲観シナリオ)

立憲や他の野党が「改憲ありき」の姿勢を激しく批判し、国民民主や公明が世論の動向を見て慎重姿勢に転じるケースです。2027年春の統一地方選を前に、各党が地方選への影響を警戒して改憲から距離を置く展開も考えられます。とりわけ、国民民主との関係修復が不調に終わった場合、参院での3分の2確保は極めて困難になります。

よくある質問(FAQ)

Q. 高市首相が言う「憲法改正の発議を1年以内」とは具体的にどういう意味?

2026年4月12日の自民党大会で「来年の党大会までに発議のめどをつけたい」と発言したもので、来年春(2027年1〜3月頃)が実質的な目標期限です。萩生田光一幹事長代行は、「めど」の意味として「条文の整理」と「各党の合意」の二点を挙げています。発議そのものではなく、発議に向けた準備が整った状態を指す可能性もあります。

Q. 憲法改正の国会発議に必要な議席数は?

日本国憲法第96条の規定により、衆参各院の「総議員の3分の2以上」の賛成が必要です。現在の衆議院は定数465で3分の2ラインは310議席、参議院は定数248で3分の2ラインは166議席です。自民党は衆院で316議席を持ち単独でクリアしていますが、参院では与党会派120議席で46議席足りません。

Q. 参院で3分の2を確保するためにどの政党の協力が必要?

自民(101)+維新(19)の与党会派120議席に加え、国民民主党(25議席)、公明党(21議席)、参政党(15議席)などからの協力が必要です。現実的にはこれらの改憲に前向きな全会派の賛成に加え、無所属議員数名の賛同がなければ166議席に届かない計算です。

Q. 国民投票はいつ行われる?

国会が発議した後、60日以上180日以内に国民投票が実施されます。仮に2027年春に発議された場合、同年夏から秋にかけて国民投票が行われる計算です。有効投票の過半数の賛成で憲法改正が実現します。

Q. 自民党の改憲4項目とは?

2018年にまとめられた4つのテーマで、①自衛隊の明記(9条への追記)、②緊急事態条項の新設(大規模災害等への対応)、③参議院の合区解消(各都道府県から最低1人選出)、④教育の充実(教育環境整備の努力義務)です。萩生田幹事長代行は4項目の一括発議にこだわらない柔軟姿勢を示しています。

Q. 高市政権と国民民主党の関係がこじれた原因は?

2026年度予算審議をめぐる対応がきっかけです。予算案の採決や修正協議の過程で両党間に意見の相違が生じ、信頼関係が損なわれました。自民党の鈴木俊一幹事長は連立枠組みの拡大に意欲を示しており、改憲論議を通じた関係修復を狙っているとみられています。

まとめと今後の注目ポイント

高市首相が自民党大会で示した「1年以内に改憲発議のめど」という目標は、衆院で316議席という歴史的大勝を背景にした強い意思表示です。しかし、参院では与党会派が3分の2に46議席足りない「少数与党」の現実があり、国民民主党・公明党・参政党など複数の会派との合意形成が不可欠です。

萩生田幹事長代行が「4項目の一部先行発議もあり得る」と柔軟姿勢を示したことで、緊急事態条項など個別テーマでの発議が現実的な選択肢として浮上しています。一方、立憲民主党が「改憲ありきの議論」に強い危機感を表明しており、与野党の対立が先鋭化する可能性もあります。

今後の注目ポイントは、第一に衆参の憲法審査会での議論がどこまで加速するか、第二に国民民主党との関係修復が進むか、第三に2027年春の統一地方選が各党の改憲姿勢にどう影響するか、の3点です。日本の憲政史上初となる憲法改正が現実味を帯びるかどうか、この1年間の政治動向から目が離せません。

 



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